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NESSENTIAL PROJECT

使用済みPlaX靴下のケミカルリサイクル実証実験

2026.01.21

Bioworksは、東京都主催「社会課題解決型スタートアップ支援事業(Tokyo Co-inNovators)」のコンセプト検証支援を活用し、次世代合成繊維「PlaX(プラックス)」を使用した製品のケミカルリサイクル技術の確立と社会実装に向けて、使用済み靴下を対象とした回収・リサイクルの実証実験を実施しました。

当該実証実験の結果および、プロジェクト参加者を対象に実施したアンケート調査の結果について報告します。

■ 実証実験概要

本プロジェクトでは 、株式会社グラックジャパンが運営する自社ブランド「TARROW TOKYO」と都内商業施設の2社協力のもと、PlaX を使用した靴下を消費者・事業者に配布し、一定期間ご使用いただいた上で回収。回収した靴下を用いたケミカルリサイクルの実証実験を行い、技術・コスト・環境負荷・ユーザビリティの観点から、新たな循環型ビジネスモデルの確立に向けて検証を行いました。

参加者TARROW TOKYO ブランドユーザー・Bioworks 社員・Bioworks 取引先企業・商業施設スタッフ
回収方法・TARROW TOKYO ブランドユーザーにポリ乳酸でできた回収袋と郵送キットを事前に配布し、個人で発送。
・Bioworks、取引先企業・商業施設の各企業オフィスに回収ボックスを設置し、回収袋に入れて投入。
配布した靴下の仕様靴下(素材混率:綿 58%、ポリ乳酸[PlaX]23%、ナイロン 11%、ポリエステル 6%、ポリウレタン 2%)

■ 実証実験の結果

本実証実験では、汚れなどが付着した使用済み靴下であっても、ケミカルリサイクルにより原料であるポリ乳酸へ再生できるかを検証しました。

なお、本実証は靴下などの製品化までを行うものではなく、原料であるポリ乳酸の生成までを検証対象としています。

ケミカルリサイクルのプロセス検証は、ラボスケールからパイロットスケールまで段階的に実施。ラボスケールで最適条件を導き出したうえでパイロットスケールで検証した結果、いずれの段階においても高純度・高品質な再資源化素材(モノマー)が得られることを確認しました。さらに、その再資源化素材を用いて製造した PLA 樹脂は、通常品と同等の性能を示し、再利用が可能であることが実証されました。

一方で、分離工程における原料の収率や、事業化を見据えた際のコスト面については課題が明らかになりました。これらの課題に対しては、高混率製品の設計推進や PlaX の流通拡大を進めるとともに、今後も改善に向けた取り組みを強化してまいります。

また、想定される製造条件をもとに実施したLCA分析(試算)の結果、リサイクル原料を使用した靴下は、バージン原料を使用した靴下と比較して、約9%のCO2 削減効果が見込まれることが分かりました。さらに、糸製造段階においては、リサイクルPlaX短繊維が既存のPlaX短繊維と比べて、約80%の CO₂排出量削減効果を有することも明らかになりました。こうした特性を踏まえ、PlaX の混率など製品設計を工夫することで、製品全体としてさらなる削減効果が期待されます。

■ ケミカルリサイクルプロジェクト参加者アンケートの結果

本プロジェクトでは、ケミカルリサイクルの回収において「割にあわない」「面倒くさい」「次の人に使われることに抵抗がある」「他人に見られたくない」などの消費者の心理的な課題があると仮定し、課題解決に向けて施策を設定しました。

それらの効果を検証するため、靴下回収後、プロジェクト参加者を対象に個別アンケート調査を実施しました。

その結果、汚れやにおいのついた靴下でもリサイクル回収において「不安や不快感を感じなかった」と回答した参加者が 70.8%に達し、回収に対する心理的な負荷が低いことが分かりました。さらに 70.8%の参加者が、「回収に手間を(あまり)感じなかった」と回答しました。

背景として、回収設計における以下の工夫が寄与したと考えられます。

・ポリ乳酸で作られた回収袋を配布:回収時に他人に見られたくないといった心理的負荷を軽減するため、事前にポリ乳酸で作られた回収袋を配布。参加者には使用した靴下を回収袋に入れて郵送、BOX 投函してもらい、そのまま開封することなくリサイクルする仕組みを採用しました。

・ポスト/回収 BOX 投函のみで完了する回収動線:参加者の負担を最小限に抑えるため、投函のみで回収が完了するシンプルな回収動線を設計しました。

あらかじめ郵送キットを配布し、自宅からポストへ投函する方法に加え、オフィスでは回収BOX を設置し、靴下を持参して投函するだけで回収が完了する仕組みを採用しました。

さらに、今後同様のリサイクルの仕組みがあれば「ぜひ利用したい」「機会があれば利用したい」と回答した参加者は合計 93.7%にのぼり、高い再利用意欲が示されました。

回収された靴下の購入意向については、「通常商品と同程度」「通常商品より安価」であれば購入したいと回答した人が計 87.5%を占めており、コストを市場ニーズに合わせることで、リサイクル製品としての受容性を高められる可能性が示されました。

一方で回収品目を「肌着」や「下着」に拡大した場合には参加意向が低下し、とくに「下着」では 29.2% が参加に消極的と回答しました。「靴下」に比べ、心理的な抵抗が大きいことが課題として浮き彫りになりました。

本実証で得られた消費者行動や心理的ハードルに関する知見をもとに、今後はパートナー企業と連携しながら、回収から再資源化までを見据えた持続可能なリサイクルモデルの構築を目指してまいります。